2013年9月18日水曜日

【注目ニュース】Open Education Alliance / edX+Google=mooc.org / 「能力ベースの教育」の試行



・Udacityが「Open Education Aliance」を設立

MOOCプロバイダのUdacityが、IT企業や教育機関と協同で「Open Education Alliance」を立ち上げた。三者の協力により、IT企業で活躍する若い人財を育成することを目指している。これまでもUdacityは企業に優秀な学生の就職斡旋をするなど連携を続けてきた。このアライアンスで、Udacityは共同で企業で活躍できる人財を育てるための21世紀にふさわしいカリキュラムを作ることを目指している。

Udacityはこの取り組みの背景として、若年層の就職難、企業ニーズとのミスマッチなどがあり、この問題を解決するために、企業や教育機関と連携したオンライン教育環境を活かすことが必要だと主張している。

アライアンスにはAT&TやGoogleなどの大企業も参加している。オンライン教育によって社会と教育の場が「接近」し、より社会の(時に短期的な?)ニーズに近い教育が行われるようになる。Udacityは数あるMOOCプロバイダの中でも、社会とより近接したオンライン教育を推進してゆくように思われる。

蛇足だが、このような取り組みによって「オープンエデュケーション」の言葉自体が持つ意味合いが、ますます広がってゆきそうだ。


Open Education Alliance - Udacity
https://www.udacity.com/opened



・edXがGoogleと提携し "mooc.org"を開設

大学によるMOOCコンソーシアムedXが、Googleと提携し"mooc.org"というオンライン教育のホスティングサイトを開設した。

edXの声明によれば、edXはGoogleと協同して”Open edX”というオープンソースの学習プラットフォームを開発する。そして、"mooc.org"というホスティングサイトで、Open edXを使いedXコンソーシアム所属校(※edXでコースを開講している大学)以外の誰でもMOOCを開講できるサービスを全世界的に提供する。大学や企業、政府や個人の教師など、誰でもMOOCを"mooc.org"上で始められる。条件や料金等は、現時点で明示されていない。

Googleは自社ブログにて、オンライン教育の拡張に伴って、edXと共に多様な教育のエコシステム開発を支援することを宣言している。Googleには以前から、Course Builderというオンラインコースを開講できるオープンソースソフトウェアを公開していた。Course Builderのサイトにも声明が掲載され、Course Builderの開発は当面進められるものの、Open edXへの移行に伴い、規模は縮小されるとのことである。

これまでもTED-Edなど、誰もがオンライン教材を作り公開できるサービスはあったが、edXのような「フルスペック」のMOOCを、プロバイダとの契約なく、誰もが制作し開講できるサービスはこれまでになかった。MOOCの活用やビジネスモデルが再考される大きな転換点になると思われる。


mooc.org - Press Release
http://mooc.org/press.html

We are joining the Open edX platform
http://googleresearch.blogspot.jp/2013/09/we-are-joining-open-edx-platform.html

Course Builder & edX - Google グループ
https://groups.google.com/forum/?fromgroups#!topic/course-builder-announce/vtW1KiK5_Kc


・「能力ベースの教育」の試行

米国南ハンプシャー大学に"College for America”というオンライン教育プログラムがある。働きながら学ぶ学習者に、個々人が求める専門スキルを身につけさせることを狙い、能力ベース(Competency-Based)の単位認定を与え2年制カレッジの学位を授与する。

「能力ベースの教育」とは、学生に単位を与える際に、履修時間や単位時間によってではなく、学生の能力に応じて単位を与える仕組みである。学生が入学時に既に持っている能力をテストや面接で判断し、適切な能力を持っている分野についてはそのまま単位を与え、そうでない分野では補習や講義の履修を課して、学生がある学位を取得することにふさわしいレベルまで引き上げることを狙う。専門職に就いている社会人など、既に知識やスキルを持った学生にとっては、より安価に学位を取得できるシステムである。

College for Americaには、今年ゲイツ財団やEDUCAUSEが540万ドルの支援を行っている。より安価に大学学位を取得できる仕組みとして期待されているが、

・各分野の「能力」をどう定義し提示するか?
・「能力」の適切な評価は可能か?

など、疑問も残る。一方で、履修時間のみに頼った「教え込み」が万能でないことも確かである。

教養より「就職力」をつける! ビル・ゲイツが考える大学像:PRESIDENT Online - プレジデント
http://president.jp/articles/-/10582

College for America
http://collegeforamerica.org/latest/entry/educause-gates-unveil-grant-for-college-for-america

OpenEducation Update JP: 4月 2013
http://oedupdate.jamsquare.org/2013_04_01_archive.html

2013年9月9日月曜日

【注目ニュース】米国の学費削減ビジョン / MOOC担当講師の懸念 / SJSU Plusの受講状況


・米国における大学学費の削減ビジョン

オバマ大統領がバッファロー大学で講演し、4年制大学(カレッジ)に通う学生の学費を下げ、卒業生の学生ローン負担を減らすための施策を明らかにした。大学のパフォーマンスを測る新しい評価システムを導入し、大学入学希望者にとってより高い価値を提供する大学の選択や、公立大学への補助金や学生向け奨学金を支出する際の指標にも用いる。卒業生の借金返済を月収の10%に抑えることも目指す。一方で、この宣言の実行可能性に疑問も持たれている。

演説では、大学の教育コストを下げる方策として、MOOCsを活用した安価な大学や能力ベース(Competency-Based)の単位認定が引き合いに出されていた。オープンエデュケーションが新しい学習環境の創造のために目指されるだけでなく、社会における教育の課題解決のためのソリューションとして、ますます社会の中で位置づけられ、存在感を増してゆくように思われる。

Obama Plan to Tie Student Aid to College Ratings Draws Mixed Reviews - Government - The Chronicle of Higher Education
http://chronicle.com/article/Obama-Plan-to-Tie-Student-Aid/141229/

・MOOCの担当講師によるコースの活用方法への懸念

プリンストン大学教授のMitchell Duneierが、Courseraで開講し人気を博していた「Introduction to Sociology」を、彼自身の意思により次回から開講しないことを明らかにした。

CourseraはDuneier教授のコースを他の大学へライセンスし、ブレンド型学習の教材として提供することを計画していたDuneier教授はこのようなコースの使い方が大学の教育コストを削減を促し、州政府が州立大学への予算配分を減らす口実を作ることになるとの懸念を持ったという。

また、コースを他の大学にライセンス提供することでDuneier教授は報酬を受け取るが、教授はこれを不快に感じたという。コース利用の教育的効果についても疑念を持ったとのことである。

MOOCは様々な場面で利用できるオンライン教材になりうるが、利用にあたってはコースを担当する講師、コースを公開したプロバイダの両者の合意が必要となる。また、講師の所属する大学も関わることになる。講師と大学とプロバイダ、この3者の目的と思惑が一致してはじめてコースの活用が可能となる。

現状、MOOCのオーナーシップや著作権は同意書などにより個別に処理をされているが、MOOCの活用が新たに「発明」されるにつれて当初の合意が反故になることも考えられる。今後を占う事例として興味深い。

A MOOC Star Defects, at Least for Now - Technology - The Chronicle of Higher Education http://chronicle.com/article/A-MOOC-Star-Defects-at-Least/141331/?cid=at&utm_source=at&utm_medium=en


・MOOC「SJSU Plus」の受講調査を公表

サンノゼ州立大学がUdacityと合同で開講した、大学生と一般向けのMOOC「SJSU Plus」について、NSFの補助を受けて実施された調査結果が発表された。

SJSU Plusは今年の春と夏、2回開講された。受講者の修了率について、春のコースは83%、夏のコースは60%だった。そのほか、オンライン講義が効果的な教育ツールであり、オンラインコースを受講する学生のつながりが電子メールや電話などにより生み出されたと示している。一方で、大学講義そのものに不慣れな受講者は、コースについていくことに助けが必要だったこと、また通常の大学講義のスケジュールではない、より柔軟なペース配分を求めたことを挙げている。

SJSU Plusは一旦休講となったが、来年春に再び開講される予定である。

SJSU MOOC Study Reveals Achievement Gains but Low Retention Rates -- Campus Technology http://campustechnology.com/Articles/2013/09/03/SJSU-MOOC-Study-Reveals-Achievement-Gains-but-Low-Retention-Rates.aspx?Page=1