2013年7月28日日曜日

今週の注目ニュース(7/28)


・近畿大学附属高等学校で実施される反転授業

近畿大学附属高等学校では、新入生に1人1台のiPadを導入し、反転授業(Flipped Classroom)を取り入れた教育を実施している。実際の授業では理解度テストや演習問題、生徒同士のディスカッションなどの応用を中心に行っている。またiPadにはCyber Campusというポータルサイトを搭載し、教材の配布やコミュニケーションの促進を目指している。

同高校の先生方には以前、英語教育への反転授業の導入方法についてお話を伺ったことがあった。生徒に次週教材をあらかじめ用意して予習を行わせ、授業では協同学習や補足的な講義を行い、Cyber Campus上に残された視聴履歴等から生徒の理解が不十分な箇所を重点的に補習するなど、オンラインとオフラインを上手に連携させた授業を展開されている。

日本の初中等教育における反転授業導入の先端事例として注目される。

7/17(水) iPad 公開授業 近畿大学附属高等学校にて実施 - プレスリリース - 近畿大学 http://www.kindai.ac.jp/topics/2013/07/717-ipad.html


・サンノゼ州立大のMOOCs「SJSU Plus」休止を受けて

サンノゼ州立大学がMOOCsプロバイダUdacityと推進しているオンライン教育コース「SJSU Plus」が休止することとなった。Udacityのブログにて、Udacity創立者のSebastian Thrunがこの経緯について解説している。

SJSU Plusは、同大学の学生のみならずコミュニティカレッジの学生や社会人、高校生など多様な学習者が参加していた。高校生の数学の既習内容が不足していたことで、高校生のコース修了率が低くなったようである。また、社会人など働きながらコースを受講した人たちにとってはコースの進度や期間が短かったこともあり、今秋にかけてコースの改善をサンノゼ州立大学と共に行う予定とのことである。

いくつかの反省点はあるものの、SJSU Plusは83%という非常に高いコース修了率(一般的なMOOCsは10%未満とされている)を記録した。その理由として、学習者に対し講師とのコンタクトやサポートスタッフとの電話サポートやSMSを使ったリマインド(締切の告知等)など、様々な支援を行ったことが効果を上げたと評価している。

サンノゼ州立大学は並行して、学生に対しedXで公開されるMOOCsを反転授業に活用するプロジェクトを行なっている。その結果、受講生の合格率が、通常の授業では50%台だったものが、反転授業を取り入れることで90%台にまで上昇し、これを受けて、カリフォルニア州立大の他のキャンパスにも拡大している。

今回のニュースがMOOCs導入にネガティブとも取れる内容だったため、これをMOOCs導入の失敗と捉える向きも一部にはあるようだ。しかし、SJSU Plusは大学外の学習者に向けてコースを開講し同大学の単位も与えるという非常に先端的な取り組みであり、一般的なMOOCs公開や大学内での活用とは一線を画しており安易に比較できるものではない。これをMOOCsの限界としてではなく、MOOCs活用の刷新に向けたステップと捉えるべきである、また、なぜ一般向けMOOCsにも関わらずこれほどまでに高いコース修了率を達成することができたのか、その理由について深く分析する必要があるだろう。

Udacity Blog: Sebastian Thrun: Improving our for-credit college path with SJSU Plus  http://blog.udacity.com/2013/07/sebastian-thrun-improving-our-for.html


・学位やオンライン教育の認定証などの学習履歴を一括表示するサービス「degreed」

大学で取得した学位やMOOCsで取った認定証、iTunes Uでの学習経験などの経歴をまとめて示せるサービス "Degreed" が公開された(ベータ版)。学位だけでなく、オンライン教育で取得した認定証、Mozilla Open Badgeのようなデジタルバッジ、読んだ論文や書籍や視聴したビデオ、持っているスキルなど、自らの能力を証明できる様々な学習経験や認定を分け隔てなく掲載できる。さらに、それらの経歴をポイント換算し示すこともできる。私も試しに使ってみたが、残念ながら今のところ、日本の大学名は掲載できないようであった。

学習機会が学校や大学などの教育機関だけでなく、企業やオンライン講座など様々な場所に拡がっている現在、このような自らの学習経験や成果を可視化するサービスが有用になると思われる。日々の学習の成果が一括してサイト上に掲載されることで、求職者が自らのスキルをより明確に示したり優れた人財を発掘したりすることが容易となる。また、学習者が日々積み重ねる学習記録をサイト上に残すことで、自らの目標設定を明確にしたりやる気を高めたりすることにもつながるかもしれない。継続を期待したいサービスである。

http://degreed.com/

2013年7月16日火曜日

今週の注目ニュース(7/14)


・BBCのMOOCs特集ニュース

BBCのウェブサイトでMOOCsの特徴をわかりやすく紹介したニュースが配信されている。MOOCsプロバイダCourseraのAndrew Ngのインタビューや複数の教員によるコメントや論考などで構成されていて、大変分かりやすい。

ニュースではMOOCsが一方向的な知識伝達ではなく双方向性を持った学習コミュニティであること、高等教育に破壊的イノベーションを起こしうることなど、幅広く紹介がなされている。

http://www.bbc.co.uk/news/education-23069542


・米国大学生の抱える多額の学生ローン

記事によると、この7月より学生ローンの金利低減措置が失効することで金利が2倍となる。このことで、米国の学生約2000万人のうちおよそ700万人が学生ローンの負担に直面すると言われている。

学生ローンは景気後退下でも残高が増加を続けた唯一の家計債務とされている。2010年には残高ベースで自動車ローンやクレジットカードローンを上回り、住宅ローンに次ぐ存在となっている。この背景には学費の高騰や進学意欲の高まりがあるとされている。大学進学に生涯給与の上昇など相応のメリットがあるとみなされる一方で、ローン返済の負担感も強まっている。

米国の若者が抱える学生ローンの重荷 | トレンド | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト
http://toyokeizai.net/articles/-/15230


・MOOCsプロバイダCourseraが4300万ドルを調達

MOOCsプロバイダのCourseraが先週複数のベンチャーキャピタルから4300万ドルを調達したことを発表した。Courseraは昨年2200万ドルを調達していたが、この倍近い額の資金を獲得した。これによりCourseraはモバイルアプリの開発やサードパーティーアプリ開発の門戸を開くこと、国際化などを推進すると発表している。

Courseraはこの1年で83の教育機関から400のコースを公開し、受講者は400万人を突破している。Courseraは既にシグネチャ・トラックによる受講料収入やジョブマッチング、大学へのカスタマイズコース提供などにより収益を上げているとみられるが、今回の新しい資金調達をきっかけにして、より収益モデルを強化する必要に迫られるではとの見方もある。


Coursera Blog • Coursera Secures $43M in Series B Funding, Plans to Double in Size
http://blog.coursera.org/post/55080731561/coursera-secures-43m-in-series-b-funding-plans-to

Coursera Raises $43m, LMS and MOOC Collision In Learning Platform Market |e-Literate http://mfeldstein.com/coursera-raises-43m-lms-and-mooc-collision-in-learning-platform-market/?utm_source=feedburner&utm_medium=feed&utm_campaign=Feed%3A+mfeldstein%2Ffeed+%28e-Literate%29

2013年7月7日日曜日

今週の注目ニュース(7/7)


・英国オープン大学(Open University)の40年

英国オープン大学が第1期の卒業生を送り出してから40年経ったことをBBCが報じた。

当時はまだ(というか、今も?)通信教育に対して懐疑的な見方が多かった時代、オープン大学の思想は驚きをもって世間に迎えられた。開校から40年たった今、高いレベルの教育機関として認められながら、今も変わらず遠隔教育・オンライン教育の拠点としてあり続けていることに、大学関係者の継続的な努力、また英国的?な強いこだわりを感じる。

オープン大学について深く知りたい方には、「ラーニング・アロン 通信教育のメディア学」の第9章、本田毅彦先生が執筆された「イギリス高等教育におけるオープン大学」を一読されることをお勧めしたい。

http://www.bbc.co.uk/news/education-22982653


・高等教育への安易なMOOCs導入に対する批判

大学の講義に反転授業の教材としてMOOCsを使ったり、ACE Creditなどの単位互換制度を使ってMOOCsの受講者に大学単位を与えたりなど、様々な形でMOOCsが高等教育に導入されはじめている。しかしこのような動きへの批判も相次いでいる。

この論考では、一人の講師が数万人の学生を教える事ができるMOOCsを安易に導入することが安易なコスト削減の手段につながると大学の運営者が考え、大学教育の質を落としかねないことを懸念している。

Who's Afraid of the Big Bad MOOC? (Me.) http://www.mindingthecampus.com/originals/2013/06/whos_afraid_of_the_big_bad_moo.html


・大学入学前に適応学習(Adaptive Learning)を導入する試み

米国のユニオン・カウンティ・カレッジでは、来秋に開かれる数学の講義に適応学習(Adaptive Learning)を導入することが計画されている。入学前の夏期に単位を与えないコースを開講し、入学後の講義を問題なく受けられるよう前もって学力を高めることが狙われている。

以下インタビューでは、担当者のインタビューが掲載されている。夏期の講義で学生を小さなグループに分け、それぞれのレベルに応じた事前学習プログラムに取り組ませるようだ。入学前に大学教育を十全に行えるよう備える方法として興味深い。

Customizing the Learning Experience with an Adaptive Learning Strategy -- Campus Technology http://campustechnology.com/articles/2013/07/03/customizing-the-learning-experience-with-an-adaptive-learning-strategy.aspx