2012年5月29日火曜日

オンライン上で教育目的に著作物を扱う「フェアユース」の判例

3つの大手学術出版社が、ジョージア州立大学が出版物の著作権を侵害していると訴えた裁判で、裁判所は出版社の訴えをほぼ取り下げる判決を言い渡した。


Long-Awaited Ruling in Copyright Case Mostly Favors Georgia State U.
http://chronicle.com/article/Long-Awaited-Ruling-in/131859/


ジョージア州立大学では、教員がオンラインで著作物を資料配布し、ログインした生徒が閲覧できる仕組み(e-reserve)を導入している。ここでの著作物の扱いが、フェアユース(Fair Use:著作物の教育利用が著作権侵害に当たらないとする抗弁事由)にあてはまるかが問われた。

判決では、99の著作物のうち5点のみが著作権侵害に当たるとされた。判決では、この利用方法が商用ではなく教育目的であること、著作物の性質、著作物をどの程度の割合で利用したか、著作物の利用がその市場価値にどの程度の影響を及ぼしたか、の4点で検討された。

フェアユースは著作物の扱いに関する判断材料でしかなく、教育目的の著作物利用を完全に守る法令ではない。違法性は事例ごとに評価される。今回の判例は、教育目的にオンライン上での著作物の扱い方を示す重要な事例になると思われる。

フェアユースについては、以下リンクに詳しい。

フェアユース - Wikipedia http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A7%E3%82%A2%E3%83%A6%E3%83%BC%E3%82%B9

U.S. Copyright Office - Fair Use
http://www.copyright.gov/fls/fl102.html

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2012/8/21
原告からの差止請求は却下されました。
Judge slaps down injunction request in Georgia State copyright case | Inside Higher Ed - http://www.insidehighered.com/news/2012/08/13/judge-slaps-down-injunction-request-georgia-state-copyright-case


2012年5月7日月曜日

edXの発表:ハーバード大とMITによる「オンライン学習プラットフォーム」



MITとハーバード大が、オンライン教育のパートナーシップ”edX”を発表した。
MITは、先日"MITx"というオンライン教育プログラムを発表していたが、今後MITxはedXの一部として運営されることとなる。近々、ハーバード大も"HarvardX"という教育プログラムを開始するようだ。

edXは、誰でもオンラインで有名大学の授業を受けれるようになるサービスという観点から、OCWに代表されるような、これまで大学が行ってきた活動と同列に見られるかもしれないが、本質は大きく異なる。
edXは、OCWのような教育コンテンツの公開だけでなく、それらを用いてオンラインで教授学習を行うことができる「オンライン学習プラットフォーム」である。具体的には以下のような特徴が挙げられる。
  • 出版モデルから学習環境の提供へ
    OCWのような教育コンテンツの公開に留まらず、授業やテスト、認定証発行など大学で実際に行われる教授学習をオンラインで行える「学習環境」を提供する
  • 大学が設立したオンライン教育専門の非営利団体
    両大学が合計で6千万ドルを出資して、大学の外にオンライン教育を専門に行う非営利組織を作る。学習者は小額の学費を払う。OCWは地域にもよるが、寄付団体や政府による資金援助で立ち上げられることが多かった
  • edXを基盤に、オンライン教育を改善する研究を行う
    両大学はedXを運営しながら、どのように生徒が学び、どのようにテクノロジが効果的な教授をキャンパスとオンラインで手助けするかを研究し、今後の様々な取り組みにフィードバックされる
edXは他にも興味深い特徴を持っているが、発表直後に飯吉先生@京都大学がTweetされたように、まさしく「高等教育2.0」を支える土台(プラットフォーム)としての可能性を持っているように感じる。OCW誕生以降、オープンエデュケーションの実践においては多種多様な試みがなされてきた。edXの発表は一つの大きな転換点として、今後記憶されてゆくように思われる。

Twitter / @iiyoshi: MITとハーバードが次世代オープンエデュケーション・ ...
MITとハーバードが次世代オープンエデュケーション・プロジェクトで大連立。 http://bit.ly/Jp4hAV これで http://www.coursera.org とも相まり、オープンエデュケーションは本格的に新しいフェーズに入った。高等教育 2.0に、また一歩近づく。

edXについては、後日解説記事を掲載します。

edX - Home
http://www.edxonline.org/

Educating Harvard, MIT — and the world | Harvard Gazette
http://news.harvard.edu/gazette/story/2012/05/edx_press_conference/

MIT and Harvard announce edX - MIT News Office
http://web.mit.edu/newsoffice/2012/mit-harvard-edx-announcement-050212.html

両校の代表者による共同記者会見の様子を、以下ビデオで見ることができる。
http://www.ustream.tv/recorded/22290026